ABA 自閉症 療育 トモコーポ

ABAの基礎編

強化の理論(その⑦)

強化は2種類あります。
「正の強化(せいのきょうか)」と呼ばれるものと、「負の強化(ふのきょうか)」と呼ばれるものです。 人が行動する動機は、ABA的な見方をするとざっくり言うとこの2種類のどちらかに分けられます。

「正の強化」と「負の強化」をご紹介した後、療育を含めた対人援助においては「正の強化」が推奨される理由についてもページの後半で触れて行きます。

正の強化と負の強化



「正の強化」とは、

   特定の状況で行動をしたことで、行動以前にはなかった出来事が出現した結果、行動が強められる




「負の強化」とは、

  特定の状況で行動をしたことで、行動以前にあった出来事が消失(または、減少)した結果、行動が強められる



場合のことを指します。かなり、言葉が難しいですよね。

「正の強化」の例を、見て行きましょう!

この例のように、
  行動以前にはなかった出来事が結果として手に入り、行動が増加した時を「正の強化」と呼びます。

次は、「負の強化」の例です。

この例のように、
  行動以前にあった出来事が消失(または、減少)した結果が手に入り、行動が増加した時を「負の強化」と呼びます。

強化の理論(その⑥)?で書きましたが、一般的には療育などの対人援助においては、 「正の強化」によって行動を増やして行く支援の方法を取った方が、「良い」とされています。

正の強化が療育に適している理由

「正の強化」で維持している行動は「自発性」、「拡大性」が伴う可能性があります。

療育では、ターゲットスキルを教える時にお子さんがターゲットスキルを「自発的に行ってくれる」こと、 「拡大して行ってくれる」ことはとても重要です。

例えば「正の強化」によってターゲットスキルを増加させた場合、以下のような良い循環が生じる可能性があります。

お皿洗いのお手伝いをしたお子さんをお母さんが褒めたところ、 次回からお皿洗いを自発的に行うようになった。(←自発性の増加)

しかも、3回目、4回目と回数を重ねるごとに洗った後のお皿の並べ方が丁寧になっていっている。(←自発的に拡大が拡大)

今度は、(お母さんに誉められることを期待してか)自分からお部屋のお片づけもするようになった。(←自発的に行動が拡大)

また、お母さん以外でも(褒められると予想したからか?)近所に住んでいる自分よりも年下のお子さんに優しく接することがあった。 結果、その年下のお子さんのお母さんに「優しいね」と褒めてもらえた。(←自発的に行動が拡大)

それが気に入ったようで、家では今までしなかったオママゴトの遊びが最近のはやりらしい。(←自発的に行動が拡大)

「今日○○ちゃんに優しかったね。偉いね」とお母さんが褒めてくれる。すると今度はお父さんに対して・・・

※  結果的に、 以上のように行動の「自発性」、「拡大性」が確認された時に初めてお子さんにとって「褒められることは正の強化であった」と判断します。



と、どんどんと自発的に行動が拡大していく可能性があるのです。良い循環ですね。 お子さんが、自発的に変化して行ってくれることが期待されます。

ちなみに、こういったものも「正の強化」の例と言えるでしょう。

お腹が空いた時に、たまたま冷蔵庫を開けてみると昨日の晩ご飯の残りが入っていた。

次から、お腹が空いた時には冷蔵庫を開けるようになった。(←自発性の増加)

冷蔵庫になかった時には、棚も開けるようになった。(←自発的に行動が拡大)

棚にない時には、お母さんのかばんの中を見てみることがあった。(←自発的に行動が拡大)

このように、どこにも見当たらない時には積極的に食べ物を探すことが見られるようになった。(←自発的に行動が拡大)



このように、行動を起こした後に手に入った結果によって行動が自発的に拡大して行くことが「正の強化」の1つの特徴です。

いままでなかった行動が広がっていくことを、「行動レパートリーの拡大」と言います。

対して「負の強化」では、行動以前の出来事が低減・消失するために行動を起こしているため、「行動以前の出来事」がない状況では生じにくいです。 そのため、「自発性」と「拡大性」が「正の強化」と比較して少なくなってしまいます。

「結果的にお母さんの機嫌が悪くなるから、その予測される不機嫌さを低減、消失させるためにターゲットスキルを行った」

例えば、「お母さんの機嫌が悪くなってきたから、宿題をした」というように「負の強化」により (ターゲット)行動を促進させるように計画を立てて行くと「お母さんがいない状況では宿題をやらない」、 言い換えると「自発的には行ってくれない」といったことになりかねません。

ややこしいのは、「正の強化」と「負の強化」は混在する場合が多いということです。

先ほどの冷蔵庫の例は「正の強化」の例としてご紹介しましたが、「お腹が減ったという状況を低減、消失させるために行動をした」と、 説明されても納得しそうではありませんか?

「正の強化」と「負の強化」は混在します。 その行動は「正の強化」と「負の強化」のどちらのエッセンスの比重が大きいのか?という点が重要です。

どちらのエッセンスの比重が大きかったかは、後のその子の行動を見て判断して行きます。

さて、先のページで「社会的強化子」というものをご紹介します。 「社会的強化子」とは、療育を含めた対人援助において優秀とされている強化子のことです。 まず「社会的強化子」について説明をする前に、次のページではここで初めて出てきた「強化子」という言葉についての説明を行っていきます。